国際バカロレアってどれくらい難しいのか?

こんにちは! マレーシア在住6年目の野本です。

最近話題の国際バカロレア(インターナショナル・バカロレア)資格。マレーシアの日本人の親に聞くと、取得するのはかなり難しいそうです。もともとは、外交官の子供の教育のために開発されました。

国際バカロレア(IB)は、1960年代にスイスで開発された教育プログラムです。元々は、世界各国の外交官や国際機関職員などの家庭の子供たちがインターナショナルスクールを卒業した後、母国の大学に進学するための入学資格を付与する目的で開発されました。(文部科学省のホームページより)

どれくらい難しいか。
日本の大学職員は「大学教養課程程度」と表現し、保護者は大人が日本語で読んでも難しいと話していました。

本当に難しかったバカロレアの中学校の問題

最近、IBの中学生の課題を学生さんに見せてもらい、その難しさに正直、驚愕しました。

例えば、中学生2年の数学。
FBIの犯罪統計資料を見ながら、犯罪率を調べ、どの町が住むのに適しているかを論じよ」という課題が出ていました。

数学なので、グラフを作るのが目的ですが、さらに英語で数十ページのレポートを作る必要があります。単に数学が得意なだけではできません。

このお子さんは、3万語(23ページ)のレポートを書いていました。
夜中までかかって作業したと言ってました。

日本人が英語でこの長さの論文を日常的に出すのは、簡単ではないですね。

IELTSのライティング課題なんて簡単に見えてしまいます。
正直、私が大学で書いたゼミ論よりもレベルが高いかも……と思いました。
彼は満点をとりました。この学びが楽しくてしょうがないようです。

イギリス式(ケンブリッジ)の学校のわが子も、短い論文はよく書いていますが、数十ページのレポートを日常的に作ることは稀です。また、教科書も日常的に使っていますし、暗記もします。(イギリス式の場合、学校によって教え方はだいぶ違いますね)

もう一つ、IBでは「考える人」を育てます。美術でも色や形を選ぶ際に「どうしてその色にしたのか」、体育でも「なぜその動きなのか」、明確に説明しないといけないそうです。

これは、物事の言語化が苦手で、「なんとなく」物事をやっている子供にとっては、かなり大変な作業だろうなーと思います。
英語が苦手ならなおさらですよね。
だから、どこの学校でも、IBでは英語力の強化をうるさく言うんだろうなー、と思いました。

一方で突き詰めて考えたり、知的好奇心が強かったり、文章を書くのが大好きだったりする子にとっては、最高の環境かも知れません。

最後の過程に進めるのは半分

そして、最も難しいと言われるのがディプロマと呼ばれる2年の最終過程です。

日本のKインターのページには
「世界的な統計によると、フルディプロマの受験者は全体の50%以下で、そのうち80%がディプロマを取得します。」
と書いてあります。

意味がわからないので聞いたところ、世界全体でディプロマに進めるのが半分以下、その後最終試験に受かるのがうち80パーセント、ということだそう。
https://www.kist.ed.jp/ja/node/1152

つまり、各学校の出している「平均点」は、あくまで「試験を受けることができた」子の平均です。
IBの学校は大抵IB以外のコースも併設していて、Year9くらいで成績が悪いと、IBを諦めIGCSEなどに行くよう指導しているようです。
日本のインターも同様で、IBに向かない子にはSATを勧めるという学校がありました。

イギリス式のIGCSE/Aレベルを採用している学校でも、最終試験の合格率を上げるために、成績の悪い生徒はある程度の年齢で退学や転校を促されることがあるそうです。平均点を下げたくないというわけですね。

オールマイティな学習が求められる

さて、肝心のディプロマの内容ですが、6つの科目群からそれぞれ教科を選びます。

言語と文学
・言語の習得
・個人と社会 ・自然科学
・数学
・芸術

さらに以下の3つが必須です。

1. 知識の論理 (TOK);

2. 課題論文(EE); 独自の研究課題を選び、学術論文を書く

3. 創造性、活動、奉仕 (CAS)


「学術論文を書く」ですから、もう大学レベルですね。さらに奉仕活動や難関と言われるTOKを学ばねばなりません。

受験した人たちの体験談を聞くと、

・2年間はレポートやエッセイの提出で気が抜けず、とにかく課題が多い
・試験も難しい。暗記科目というより、より深く考察し、分析しなくてはならない
と、なかなかにハードな内容みたいです。
ある日本人の父兄は、特に「TOK」が難関だと話していました。

さらにIBでは「自分だけができてもダメ」です。他人と協力したり、仲間を助けたりする人格も求められます。IBが求める「10の人物像」には「コミュニケーションができる人」「心を開く人」「思いやりのある人」「バランスの取れた人」というのが並びます。

NPO法人の代表としてインターンを受け入れている立花貴さんは「IBの学生たちは日本の大学生よりも大人だ」と日経電子版で書いています。

 

日本の大学生よりも大人な高校生たちhttp://college.nikkei.co.jp/article/46652512.html

知れば知るほど魅力的なIB。
日本でも、文科省の旗振りの元に、IBを導入する取り組みが始まっています。

しかし、受ける側も教える側も大変そうです。向き、不向きもあるでしょう。
一芸に秀でたタイプ、例えば、理数系は得意だけど、文章を書くのは大嫌い、というタイプには向かないかもしれません。
私自身はやってみたいですが、自分の子供に向いているか? 
と言われると考えてしまいますね。

導入すれば知のレベルは大きく上がり、自分の頭で考える人が増えることは、間違いないでしょう。

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