「準備の罠」にハマらないためにどうするか

「なかなか英語を話せるようにならない」と嘆いてる人がいました。
聞けば、全然実地で練習していないようです。
ひたすらテキストを読んでいる。

「もう少し、できるようになってから話したいのだ」と。完璧に文法の間違いがなくなってから、口に出したいんだと。

英国サマースクールで出会ったイタリア人。
英語を習った初日すでに「アイ・アム……」と話そうとしてる。
驚きました。

初日から強引に話しちゃうのか! 
それでいいんだ!

と衝撃でした。

実は、語学って筋肉運動に近いところがあります。
間違いながら、恥をかきながら上達していくものだったのですね。

しかし、「まだ早い」「完璧にしてからだそう」と思ってしまう……。
今日はこの「準備の罠」について書きます。

延々続く基礎練習が生み出すもの

日本の部活やお稽古事は、延々と基礎練習をすることが多いですよね?私は小さい頃からピアノを習いました。
「ハノン」「ツェルニー」といった「基礎練習」が数年続きました。
ようやくベートーヴェンを弾いたのは、数年してからでした。

大学ではオーケストラをやってたのですが、1年生は本番にほとんど出られません。では何をしてるかというと、ひたすら先輩たちの練習を見学してるんです。
1年間、ひたすら椅子並べとか見学とか楽器運び。

友人は「下手だから」という理由で、3年間、ほとんど出番がありませんでした。出番があるとしても、それは「二軍」のメンバーを集めた練習試合的な演奏会ばかりです。そして、来る日も来る日も、音階練習やロングトーン。

理由は「お前はまだ舞台に出るには準備が足りてない」と。

日本にはこういう部活がいっぱいあって、運動部に3年間所属してたのに、一度も試合に出られなかった、なんて話も聞きます。
そして、だんだん「自分は準備不足だから、まだ表に出たらダメなんだ」というメンタリティが形成されていくのではないかな。
なぜそんなことを言うのか。私自身もガチガチの部活に浸ったため、その傾向を自覚しているからです。準備するのは大好きだけど、本番は怖いんです。この呪い、かなり強いですよ。

「準備の罠」がなぜ危険なのか

と、思っていたら、実はアメリカでも同じようです。ドロップボックスCEOのドリュー・ヒューストン氏のMITの卒業スピーチでは、彼が「準備の罠」について話しています。

最後の罠は「準備する」ということです。誤解しないでください。学びはあなたの最重要事項です。しかし、学ぶのにもっとも早い方法は「行動すること」です。もし夢があるのなら、あなたは人生の全てをかけて計画し、「準備する」こともできるでしょう。
あなたがすべきことは、スタートすることです。正直に言って、私は自分自身が「準備できた」と考えたことは一度もありません。
(中略)
ビル・ゲイツの最初の会社は信号機のソフトウエアを作っていました。スティーブ・ジョブズの最初の会社はタダで電話がかけられるプラスチックの器具を作っていた。そして両方とも失敗しました。
Drew Houston’s Commencement addressより(筆者の超訳)

これがヒューストン氏の言う「準備の罠」です。

準備もそこそこに本番に臨む人が多い国

さて、マレーシアです。日本と真逆のメンタリティの人が多いようで、準備もそこそこに本番に臨む人が多すぎて驚きます。
子供の部活も、試合の数がそもそも多いです。
「え、こんなんでいいの?」というほど、ゆるーく始められ、すぐに試合に出してくれたりします。本番でバットを振る回数がそもそも多いんです。

子供がピアノを始めたら、先生はすぐに曲を弾かせてて、これまた驚きました。ハノン(基礎の指の練習)なんてやりません。

ちなみに、最近では日本でも相当変わってきているそうです。ピアノを習ってる方に聞くと、最近の若い先生には、基礎練習であるバイエルやハノンをほとんどやらせずに、いきなりバルトークの小曲などをやらせる人が増えてるそうです。

友人がたった1年ジムに参加しただけで「インストラクターになる」と言い出した時は、耳を疑いました。そんなのありなのか? そして友人は本当にインストラクターとして仕事を始めてしまいました。

お店もそう。「ソフトオープン」と言いながら、まだ工事中なのにオープンしてしまうのは普通です。「とにかくやってみる」方式です。ダメならその時、考える。

どっちがいいのか? 
その話はしません。
多分、大事なことは、「学ぶのにもっとも早い方法は行動すること」だということです。